奈良吉野川カヌーツーリング

ならよしのがわ 奈良県下市町〜五條市
通称「ナラヨシ」。「ノ」の一文字だけが省略される。
和歌山県では紀ノ川へと名称が変わる。
流域内人口密度 394人/平方キロ (紀の川水系)
リアルタイム水量 五條
駐車場 START 梁瀬橋下流右岸側に駐車可。
カルディアキャンプ場 利用客以外は駐車料金を徴収される。料金未確認。
芝崎(西吉野村島町のあたりを指す) 20台程度置けるが、私有地を提供してくれているらしい。公共用地もあり。
天理教前の公園(芝崎の下流500mの地点) 4台程度
GOAL 国民宿舎(緑水苑・廃館)横の駐車場を利用する。
栄山寺橋下流左岸で上陸するなら、道路脇に駐車することになる。
トイレ 芝崎の公園
天理教前の公園
もと国民宿舎横
の駐車場
買い出し 五條か下市で
温泉 金剛乃湯(700円) かもきみの湯ができたお陰で、900円から値下げ。
下市温泉(800円) 食堂のうどん・そばともに美味。
大淀温泉(500円) 老人福祉センターという肩書もあり、客の年齢層がやたら高い。露天なし。

かもきみの湯(500円) 御所市の南端。豪華で細かな配慮もされており、非常に利用しやすい。
ひとこと 水量は、ロデオ遊びなしでツーリングをするだけであれば、通年OK。
ダム建設の影響か、2002年頃から鮎が捕れなくなってきており、この区間に関しては釣り師は殆ど見られない。

佐名伝〜栄山寺(2002/5/25)

佐名伝〜栄山寺橋 11.0km 3.6‰

 この日は快晴で気温も高く、水はこの川としては透明度が高いらしい。水量はやや少ないものの、絶好のコンディションである。翌日は鮎の友釣りが解禁となるので、この日が春のラストチャンスなのである。
 はやる気持ちを抑え、スタート前にまずはビール。そして、松井さんの新艇・アークの進水式が厳かに 執り行われ、シャンペンの回しのみ。ほろ酔い気分で川に出ると、すぐに「どんぶらこ隊」の4名と一緒になった。これで8人のパーティーである。

 川の方は、さすがにWW(White Water)系の川だけあって、そこそこの瀬が結構ある。ツーリングパドラーのバイブルである小学館刊『日本の川地図101』によれば、この区間の瀬は、2級が10箇所・3級が5箇所となっている。これだけ瀬があれば、正直言ってどこがどうなっていたかなど、ほとんど記憶に残らない。まずは田畑君が沈。その先で松井さんと田畑君が沈。さらにその先で松井さん。ここまでで田畑君と松井さんが2回ずつ。二人の激しい沈脱争いの行方に、俄然注目が集まる。が、これに参戦したのが、我らが部長・月座さん。負けず嫌いなようだ。ロールを2度試みるも、うまくいかず、脱。

 このあと芝崎で遅めの昼食休憩。時間は、スタートから3時間後の2時であった。このポイントで冷えたビールが飲めるようにと、車を一台停めてあり、そこからビールも引っ張り出してきた。でも、私以外の3人は、パドリングジャケットもなく、水泳の後なので、少々寒いようだ。私は逆に暑いくらい。昼食の前に泳ぐと、このように休憩時の快適さに差が生じるのだ。夏以外の季節には、休憩前には泳がない方が賢明である。ふふふ。
 この芝崎は、栄山寺までの中間地点であり、駐車場やトイレもあって、とても便利。

 ここでゴールするどんぶらこ隊とは、ここでお別れ。この先は4人である。
 芝崎以降も、それまでと同じように瀬が続く。いや、むしろそれまでよりも大きな瀬があった。スタートして間もなく、落ち込みが2段あり、2つともストッパーとなっているところがあった(右の写真は、これとは無関係ですぜ)。艇のバウが完全に消え、腰のあたりまで水面下に沈み、艇のコントロールを少々失った。瀬に入る前に躊躇したりして艇のスピードがなかったら沈するかも。一番にここを下りおりた私は、誰かが沈脱するのは必至と、心構えをして待機。案の定、一段目で松井さんがエディに入り込み、そこからの脱出に失敗して3度目の沈。おかげで(?)、今回のために購入したカウテール付きのPFD(ライジャケ)を活用できたのであった。
 松井さんの艇は、スターンがえぐれており、ここに波を受けて上流側に倒れてしまっているように見受けられた。松井さん、早く慣れるのだ!

 この先にも、長良川の「ネコタチの瀬」をスケールダウンしたようなところがあった。大きな岩が流れの中にあり、水が岩を駆け上がっていて、岩の右側が本流だ(左下の写真も、これまた無関係)。岩の上から滑り落ちる水の上を漕ぐと、滑り落ちたところでスターンを喰われ、左側に沈しやすいのだ。私は人を避けるためこのコースに入ってしまい、少々危なかった。艇が45°くらい傾いたと思う。ローブレイスで凌いだが、この日一番のピンチであった。けど、誰も沈せず。普通のラインを漕げば、大したことはないのかもしれない。

 この川は、大阪から近い割りに人の手が入っていないところが多く、豊かな自然を味わうことが出来る様に感じた。樹々のざわめきも、久しぶりに聞いたような気がした。

 奈良吉野川は、芝崎・緑水苑・栄山寺橋下流のいずれでゴールしても、道路までカヤックを持って上がるのが大変だ。一番難易度が高いのが緑水苑かな。・・・頑張ってね。

【補足】
 五條の水位観測所で、0.8〜1.0が平常水位っぽい。
 緑水苑の手前の最後の瀬の左岸に、網に石を詰めた提がいつのまにかできており(05年08月確認)、そこに区間最大のウェーブができていた。
 なお、国民宿舎・緑水苑は閉館され、現在ではmont-belのショップと宿泊施設に改装されてます。
 

下多古〜迫(2002/7/21) ← もう漕げません・・・

 この区間は、来年にはダムの貯水が始まり、漕げなくなる箇所なのだ。ツーリングレポートをインターネット上で探したが、記録は見つからなかった。国土地理院発行の地形図と、知人が撮った写真が、事前情報の全てである。今日のパートナーは月座さんで、エックスに乗っている。私はフランケンシュタイン。

 区間の傾斜は5.7‰。北山川のオトノリ〜小松や、長良川上流部よりも大きな数値である。ドキドキしながら、道路から川を偵察したが、初心者には勧められないものの、それほど大きな瀬はなさそうであった。水量もあって、楽しめそうな気がした。ただ、ダムの貯水準備のためか、昔からの川沿いの道路の大半は通行止めで、ご丁寧にもガードマンが常駐して通せんぼしていた。その道路よりはるか上方に付け替えられた道路からの眺めが川を知る有力な手段となる。

 スタートは、下多古集落のあたり。水遊びに来ている子供も釣り師も多い。漕ぎ始めてすぐ、河原にいた子供が、「あそこも漕ぐんですかぁ?」と、2級程度の瀬を指さした。「漕ぐでぇ、見においで。」などという余裕のコミュニケーションをとったりしたのは、その後のアクシデントを想像しえなかった証拠である。

 とにかく十分な下見やデータがなかったため、迫力のある瀬では必ず下見をした。最初の下見では、乗り込んだあとスプレーカバーをつける余裕がなく、瀬に入る前になんとか艇の動きを停めて・・・ともがいているうちに、岩に張り付いた。一人で剥がせたが、最初から油断がならないところである。瀬は結構多く、2〜3級のオンパレードだ。それに鮎釣り師も多い。その人数を数えていたが、途中で数え疲れてしまった。多分40人くらい。平均すると、200m毎に一人ということになる。瀬の出口では特にひどい。声を掛けると大多数の人は竿をあげてくれるので、その点はまだマシか。

 さて、問題は右の写真である。コース中間付近にある川上中学校の真下あたり。
 写真右端に最初の落ち込みがあり、そのあとコースは右に曲がり、写真奥手にある本流上の岩の右を抜けて、そこで二段目の落ち込み、という箇所である。一段目は難なくクリア。流れにパワーがあり、その先の岩に押しつけられそうになるが、なんとか岩の右側へ軌道修正。そして、岩を過ぎて、2段目の落ち込み・・・・え゛っうわあああああああああ。予想以上の落差に驚き、体感的には3mくらいに感じた。
 この落ち込み、実際の落差は1m足らずであったが、垂直落下なのだ。右へ60度くらい傾き、ハイブレイスを入れた。多分2回。そのパドルに、大きな水圧を受けたことは記憶している。なんとか沈を逃れた私は、すぐさまエディで待機。あとから来る月座さんは乗り切れるだろうか。まもなく、月座さんは絶叫と共に落ちてきた。艇は垂直に落ち、着水後、月座さんは沈脱。しばらくは落ちてくる水に揉まれていたが、10秒ほどして艇といっしょに流されてきた。レスキューに向かうが、この下にも断続的に1〜2級の瀬が続いており、なかなかカウテールを繋げない。釣り師の方には、「すいません通ります!」を連呼。ある釣り師からは、「もっと安全なとこでやらな怪我するぞ!」と説教されたが、そんなもん、聞いてる暇はなかった。結局、月座さんには数百メートル泳いで貰った。

 やっと上陸できたところで、昼食にした。月座さんには打ち身もなさそうで、一安心。月座さんは「もうあんな落ち込み、一生に一度でいい。」とこぼしていた。たかが1mの落ち込みと侮るなかれ。岩にゴツゴツ当たって、減速しながらの落ち込みではなく、パワーのある流れにそのままの勢いで、突然真っ逆様に突き落とされたのだ。
 あー、怖かった。
 このあとの下見は、より慎重になった。瀬の出口まで、確実に見に行った。チキンルートがあれば、そちらを選択した。北山川の瀞峡をスケールダウンしたような、いい風景もあったが、そんなことはもうどうでもいい。ゴールが待ち遠しかった。

 あ、デジカメがない。さっきの下見の時に、岩の上に置き忘れたかも・・・ あーあ。後戻りが困難なので、ゴール後にカメラを探しに行くことにした。

 で、ようやくゴール。デイキャンパーの隙間に上陸した。「あ、デジカメあった!」艇の奥に入り込んでいただけだったようで、ほっとした。
 艇を持って階段を担ぎ上げ、恐怖の奈良吉野川上流ツアーを終えた。

 温泉は近くのホテルにあるが、入浴のみは受け付けていない。山を登ったところに風呂(温泉ではない)があるが、1000円の料金に見合うものではない。結局40分走って、津風呂湖温泉へ。900円であったが、いい雰囲気のところで、炭シャンプーやら炭ボディソープ・炭トリートメントを置いてあった。結構満足。

 で、二人は奈良と加古川に向けて帰っていったとさ。
 

大滝ダムの下

 高見川合流地点よりも上流の南国栖地区にある公民館らしき建物の駐車場を、500円で利用でき、それをゴールにして5.0km・6.2‰のコース設定をできなくもないが、発電に水を取られている区間であり、2kmくらいはライニングダウンになるかもしれない。かなりなマゾっ気がなければツーリングはやめた方がいい。