鮎釣りとカヌー

鮎の生態

秋田県・阿仁川にて
 鮎は春になると川を遡上し、中流域に達するとそこに住みつき、コケだけを食べる生活に入ります。やがて秋になると、河口近くまで川を下り(落ち鮎と呼ばれる)、産卵し、生涯を終えます。卵から孵った鮎は海へ流され、動物性プランクトンを食べて成長し、そして、春に川に戻ってくる、というサイクルを繰り返しています。
 縄張り意識が強く、直径1〜1.5mの縄張りを持ち、他の鮎がそれを侵せば攻撃を加えます。この習性を利用したのが、ご存知「友釣り」です。 が、縄張りを持たずに仲間と群れている「群れ鮎」の存在も知られています。「遊び鮎」と呼ばれることもあります。
 従来は、琵琶湖産のおとり鮎が「追いがいい」ということで市場の8割を占めていたのですが、最近では群れることが多くなってしまい、市場シェアは3割にまで低下しました。琵琶湖では冷水病対策として稚鮎の頃にプールで生育をする時期があるのですが、そのころの習性を引きずっているのではとの疑いがあるようです。琵琶湖では近々、闘争心の強い鮎の研究を始めるそうです。
 鮎は瀬が好きなようで、鮎釣り師もそこに集います。一方のパドラーも瀬を好むため、トラブルが起こることがあります。
 鮎が群れてしまってなかなか釣れないところに、カヌーがやってくると、「お前らあっち行け」となるんですね。関東の川では、石を投げられることもあるとか・・・
 どちらが優先ということもないんですけどね。互いが互いを認め合いさえすればいいのですが。
 ただ、「こっちはカネ払っとんや! カヌーで邪魔するな。」という鮎釣り師には、反論できます。鮎釣り師がお金を払っているのは、鮎の放流に要した費用を分担している(写真参照)ものであり、川を独占するための費用じゃないんです。言い返して差し上げましょう。

  古座川の鮎の生涯を追いかけた番組がNHKで放送されていたので、その内容をば
3月下旬 海から遡上開始。生後4か月で体長は8cm。群れで行動する。
5月上旬 中流域で縄張りを持ち始め、その広さは1平方メートルくらい。最もよく成長する時期でもあり、体長は20cm。
縄張りを持てず、生存競争に敗れた鮎は、淵鮎となる。淵では水深があるために、コケがうまく光合成できないため、鮎も小振りとなる。
7月下旬 小川の滝ノ拝(落差7m/水量毎秒10tの滝)をがんばって上る。
10月下旬 産卵のために、群れで川を下り始める。
11月下旬 河口近くで産卵する。流されてしまわないよう、石に体をこすりつけて石の下に卵を産むので、体は傷だらけとなり、その翌日には生涯を終える。死体は、ウグイ・シマヨシノボリ・エビ・サギ等のエサとなる。
12月初旬 孵化。体長5mm。川の沖に出て、プランクトンを食べて春を待つ。
  というようなことになっているそうな。

鮎釣り解禁後にも漕げる川

大井川 静岡 なぜか鮎釣り師が少ないです。隣の気田川に釣りに行くのかな。
犀川 長野 犀川は千曲川と合流し、信濃川と名前を変えて新潟市で海に注ぎます。鮎が海から戻って来るには、この川はあまりにも遠く、またダムも多いため、鮎がいません。稚鮎の放流もしていなさそうです。従って、鮎釣り師もいません。
万水川 長野 同上
梓川 長野 同上
高瀬川 長野 同上。ただし、水量は少ないです。
木曽川 愛知 観光遊船が走る川であり、釣り師側にも、川には船が通るもの、という意識があります。そのうえ川幅も広いので、互いに邪魔になりにくい。ただし、この川は夏場は特に臭うらしい。
北山川 和歌山 観光ジェット船が行き交う川ですから、釣り師側にも、川には船が通るもの、という意識があり、フレンドリーです。
奈良吉野川 奈良 最近できた上流の大滝ダムの影響か、この数年は中流域での鮎の釣果が極端に下がってます。WW嗜好のパドラーが多いこともあり、釣り師はほとんどいません。
木津川(笠置〜) 京都 年間を通じてツーリングパドラーが集う川ですから、釣り師もあきらめているかも。
篠山川 兵庫 「下見をしてみた」参照。水質が悪いから、鮎がいないのかな?
市川 兵庫 鮎釣り師は隣の揖保川へ行くようで、こちは閑散としています。ただし、どの区間を漕ぐにしても堰が多く、水量も少ないです。
太田川 広島 水質が良くないせいか、釣り師が少ないです。釣り師がいても、川幅があって避けやすい。水量は少ないけど。
四万十川 高知 木津川と同じ。
四万十川に限らず、四国・南紀などの鮎の豊富な川では、釣り師も友好的な人の割合が高いようです。

 

ある鮎釣り師との会話

 球磨川で出会った有名な鮎釣り師さんとの会話です。
 友人にラフトをやっている方がおり、カヌーに対しても友好的な方でした。この方によれば・・・
◆ 鮎釣り師のそばを、無言で通り抜けるのはよくない。「こんにちは」でも何でもいいから、声を掛けよ。
◆ 瀬の中では、声を掛けられても聞こえないので、笛を吹くことも有効。
◆ できれば、竿の下を通るよりは、後ろを回って欲しい。
◆ カヌーでは鮎は逃げないし、逃げてもすぐに戻ってくる。鮎が一番恐れるのは、漁師の川舟。
◆ 川を自分だけのものと勘違いしている釣り師は、川に投げ込んでもいい。
◆ 文句を言うヤツに限って、自分の腕が悪いのをカヌーのせいにしたがっている。
ということでした。

 鮎釣り師にも、カヌーとの共存を目指している方がいます。こちらも友好ムードで接すれば、いつの日かいい関係が結べるかも・・・